ペット保険について調べると「日本の加入率は約20%」という数字によく出会います。犬や猫を家族として迎える世帯が増え、動物医療も高度化しているのに、加入率は長らく20%前後にとどまっているとされます。一方で、動物病院の待合室で「保険に入っていてよかった」という声を聞くことも珍しくありません。数字と実感のあいだには、なぜこれほど開きがあるのでしょうか。
このページでは、公表されている加入率の数字がどこから来ているのかを確認したうえで、加入が伸び悩む背景にある制度上・商品設計上の理由を整理します。特定の商品や会社をすすめるものではなく、加入する場合もしない場合も、判断の前に確認しておきたい論点を並べることを目的としています。補償内容や保険料は会社・商品ごとに大きく異なるため、最終的な確認は各社の最新の公式資料と約款でお願いします。
日本のペット保険加入率はおよそ20%とされている
アニコム損害保険が公表している解説によると、日本のペット保険加入率は各種データからおよそ20%程度とされています。この数字は、株式会社富士経済「2025年ペット関連市場マーケティング総覧」のペット保険契約数と、一般社団法人ペットフード協会「令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査」による総飼育頭数を突き合わせて算出されたものと説明されています。
同じ解説では、海外のペット保険加入率は30%から40%ほど、スウェーデンでは50%以上の飼い主が加入しているとされており、ヨーロッパなどと比べると日本の水準は低いと整理されています。国ごとに動物医療の制度も保険商品の設計も異なるため単純な優劣の比較にはなりませんが、日本にまだ普及の余地があると語られる根拠のひとつになっています。
| 区分 | おおよその加入率 | 備考 |
|---|---|---|
| 日本 | 20%程度 | ペット保険契約数と総飼育頭数から算出された概数 |
| 海外(全般) | 30〜40%程度 | 国により制度・商品設計が異なる |
| スウェーデン | 50%以上 | 加入率が高い国の例として挙げられることが多い |
注意しておきたいのは、この20%という数字が「契約件数 ÷ 推計飼育頭数」という割り算で得られた概数だという点です。分母である飼育頭数は調査による推計値であり、分子である契約数も集計対象の範囲によって変わります。数字そのものより、その計算の枠組みを知っておくほうが実務的には役に立ちます。
加入率の数字は調査によって幅がある理由
ペット保険の加入率として紹介される数値は、出典によって十数パーセント台から三十パーセント台まで幅があります。同じ年について語っているのに数字が違うのは、多くの場合、次のような前提の違いから生まれます。
- 分母の取り方が違う。総飼育頭数を分母にするか、飼育世帯数を分母にするか、あるいは「新たに飼い始めた人」に限定するかで結果は変わります
- 分子に含める契約の範囲が違う。損害保険会社の商品だけを数えるか、少額短期保険会社の商品も含めるかで契約数は変わります
- 調査手法が違う。契約数の集計から算出したものと、飼い主へのアンケートで「加入していますか」と尋ねたものでは、性質の異なる数字になります
- 対象の年齢層が違う。子犬・子猫を迎えたばかりの層に絞ると加入率は高く出やすく、シニア期を含む全体では低く出やすい傾向があります
とくにアンケート調査は、回答者の属性がペットにお金をかける層に偏ると加入率が高めに出ることがあります。加入率の数字を見かけたときは、それが何を分母にした数字なのかを一度確認すると、記事どうしの食い違いに戸惑わずに済みます。
「20%の壁」が生まれる4つの構造的な理由
加入率が伸び悩む背景には、飼い主の意識だけでは説明できない、制度と商品設計に由来する要因があります。ここでは代表的な4つを取り上げます。
予防や健康診断の費用は補償の対象になりにくい
ペットの医療費のうち、多くの家庭で毎年決まって発生するのはワクチン接種、フィラリア予防、ノミ・ダニ対策、健康診断、去勢・避妊手術といった費用です。ところが、これらは病気やケガの「治療」ではなく「予防」に分類されるため、一般的なペット保険では補償の対象外とされていることがほとんどです。
つまり、毎年必ず出ていく費用は保険では軽くならず、保険料はそれとは別に発生します。飼い主から見ると「支払いは増えるのに、いま実感している出費は減らない」という構図になり、加入の判断が先送りされやすくなります。免責となる範囲の考え方はペット医療保険の免責事項の入門ガイドで整理しています。
年齢とともに保険料が上がる更新型が主流になっている
ペット保険は1年ごとに更新するタイプが多く、更新のたびに年齢に応じて保険料が見直される設計が一般的です。若いうちの保険料は負担しやすい水準でも、シニア期に近づくにつれて負担が増えていく可能性があります。医療費がかさみやすいのはまさにその時期であるため、「いちばん必要な時期にいちばん保険料が高い」という構造になりやすいと言えます。
加えて、その年の通院・入院の回数によって翌年の条件が変わる仕組みを採用している商品もあります。長期の負担の見通しを立てにくいことが、加入をためらう理由のひとつになっています。更新時にどこを確認すべきかはペット保険の更新条件ガイドにまとめました。
加入する時点の健康状態によって補償範囲が変わる
加入時には、それまでにかかった病気やケガを正確に告知する必要があります。告知の内容によっては、特定の部位や疾患が補償の対象外になったり、加入そのものを断られたりする場合があります。また、契約が成立してもすぐに補償が始まるわけではなく、病気については一定の待機期間が設けられているのが一般的です。
この仕組みがあるため、「体調に不安が出てきたから入ろう」と思った時点では、まさにその不安の部分が対象外になりやすいという状況が生まれます。保険が本来もっとも価値を持つ場面と、実際に加入を検討し始める時期がずれやすいことが、加入率が伸びにくい一因になっていると考えられます。
使わなかった年の保険料をどう受け止めるかが分かれる
ペット保険は基本的に掛け捨てで、病気やケガがなかった年の保険料は戻ってきません。健康な期間が続くほど「払っただけになった」と感じやすく、更新のタイミングで解約を検討する飼い主もいます。同じ金額を貯蓄に回して医療費に備えるという考え方もあり、どちらが適しているかは家計の状況や貯蓄の余力によって変わります。
一方で、動物医療には公的な医療保険制度がなく、原則として診療費は全額自己負担です。手術や長期の入院が必要になった場合の金額は事前に読みにくいため、貯蓄だけで備えるか保険を組み合わせるかは、リスクの受け止め方の問題になります。どちらか一方が正しいと言い切れる性質のものではありません。
加入する・しないを決めるときに整理しておきたい論点
加入率の数字そのものは、個々の家庭の判断材料としてはあまり役に立ちません。周囲の多数派に合わせるより、次のような自分の条件を書き出してみるほうが結論に近づきます。
- いま何歳か。子犬・子猫の時期は選べる商品が多く、シニア期は選択肢が絞られやすくなります。年齢ごとに何を確認すべきかは犬・猫のペット保険 年齢別早見表|入るタイミングを逆算するガイドで一覧にしています
- すでに治療中の病気やケガがあるか。ある場合、その部位・疾患の扱いを各社に確認する必要があります
- まとまった医療費が急に発生したとき、貯蓄でどこまで対応できるか
- 通院が中心か、手術や入院への備えを重視したいか。補償の重点は商品によって異なります
- 窓口精算に対応しているか、後日請求になるか。立て替えの負担感が変わります
- 多頭飼いの場合、頭数分の保険料を家計全体でどこまで許容できるか
補償割合や免責金額といった比較の軸はペット保険の選び方とペット保険比較の入門ガイドに、通院補償の考え方は通院補償の必要性と選び方にまとめています。立て替えの負担が気になる場合は窓口精算の仕組みと対応病院の探し方、すでに加入していて条件が合わなくなってきた場合は乗り換えを考えるタイミングもあわせて確認してみてください。
よくある質問
Q. 加入率が20%ということは、入らないほうが一般的なのですか。
A. 加入率は多数派がどちらかを示すだけで、各家庭にとっての適否を示すものではありません。ペットの年齢、持病の有無、貯蓄の余力によって適した備え方は変わります。数字を判断の根拠にするより、自分の条件に当てはめて考えるほうが実務的です。
Q. 犬と猫で加入率に差はありますか。
A. 一般に犬のほうが猫よりやや高いと紹介されることが多いものの、公表されている数値は調査によって幅があります。分母の取り方や調査手法が異なるため、複数の出典を比べる場合は前提条件もあわせて確認してください。
Q. 海外の加入率が高いのはなぜですか。
A. 動物医療の費用水準、保険商品の設計、ペットに関する制度や文化が国ごとに異なるためと説明されることが多く、単一の理由に還元することは困難です。数字の差をそのまま日本の状況の評価に持ち込むのは避けたほうが無難です。
Q. いま加入していませんが、後から入れば十分でしょうか。
A. 加入時の告知や待機期間の仕組みがあるため、体調に不安が出てからでは、その部分が補償の対象外になる可能性があります。時期による選択肢の違いを踏まえて検討することをおすすめします。加入の要否そのものは各家庭の状況によります。
Q. 保険に入らず貯蓄で備える方法はどうでしょうか。
A. 想定される医療費に対して十分な貯蓄があり、急な高額出費にも対応できるのであれば、選択肢のひとつになり得ます。ただし動物医療は自由診療で費用の上限が読みにくいため、備える金額の目安を立てにくい点は考慮が必要です。
年齢は選択肢の幅を最も大きく左右する条件です。自分のペットの年齢でどの選択肢が残っているかを先に確認しておくと、加入する・しないの判断がしやすくなります。詳しくは犬・猫のペット保険 年齢別早見表をご覧ください。
まとめ
- 日本のペット保険加入率はおよそ20%とされ、契約数を推計飼育頭数で割った概数として算出されている
- 海外は30〜40%程度、スウェーデンは50%以上とされるが、制度も商品設計も異なるため単純比較はできない
- 加入率の数値が出典によって幅があるのは、分母・分子の取り方と調査手法が違うため
- 伸び悩みの背景には、予防費用が対象外になりやすいこと、更新型で保険料が上がること、加入時の健康状態で補償範囲が変わること、掛け捨ての受け止め方が分かれることの4点がある
- 判断材料になるのは全体の加入率ではなく、ペットの年齢・持病の有無・貯蓄の余力・重視したい補償という自分の条件
加入率という一つの数字は、市場全体の傾向を眺めるには便利ですが、目の前の一頭にとって何が適切かまでは教えてくれません。数字の裏側にある仕組みを知ったうえで、複数社の公式資料を取り寄せ、かかりつけの動物病院とも相談しながら、納得できる形を選んでいただければと思います。
出典(2026年8月14日確認):
- アニコム損害保険株式会社「ペット保険の加入率はどのぐらい?」(日本の加入率の水準、海外・スウェーデンとの比較。算出の出典として株式会社富士経済「2025年ペット関連市場マーケティング総覧」および一般社団法人ペットフード協会「令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査」を掲載)
- 一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」(加入率算出の分母となる推計飼育頭数の公表元)
本記事はうちの子動物病院ガイド編集部が農林水産省・環境省・獣医師会の一次情報をもとに作成しています。ペットの健康状態に関する最終判断は獣医師にご相談ください。情報の正確性には万全を期していますが、最新情報は各公式サイトをご確認ください。 編集ポリシーはこちら
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